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1988年 野辺山電波天文台見学



 あれからもう20年以上経ちます。今も開催されている「野辺山宇宙電波観測所」(長野県)の一般公開のスナップです。
 1988年9月23日の残暑の中、同好会有志と東京から野辺山に向かいました。JR中央本線の小淵沢駅で小海線に乗換えました。標高1274mの清里駅に近づくと、車窓からおしゃれなペンションやホテルが見えます。目的地の野辺山駅を降りると、ひんやりと澄んだ空気に包まれました。八ヶ岳連峰の麓にあるこの地は、むし暑い下界とは別世界でした。高原野菜の畑が広がる道を40分位歩くと、でっかいパラボラアンテナが目の前に現れます。
 遠くの山並みを背景に、高原にそびえる直径45メートルの電波望遠鏡は、その巨大さと美しい姿で見るものを圧倒します。大きな「おわん」を目的の天体に向けて追尾する架台は、みかけの重厚さに反してとても滑らかに動きます。その架台の中を、エレベータで移動しながら見学しました。電波望遠鏡を駆動する機械設備や微弱電波を受信する精密機器は、機械というより電波望遠鏡の「器官」のように感じられました。宇宙を調べることが、こんなに大掛かりなことなのかということを、おぼろげながら感じ取るができました。

※電波望遠鏡は、2009年8月15日に「たまゆメンバーズくらぶ・星空観察会」で国立天文台の秦さんに講演していただいた「ブラックホールの観測」の主役です。


2009年 金津(石橋)


世界にその精度を誇る直径45mの電波望遠鏡です。ミリ波観測用としては世界最大口径です。 45m電波望遠鏡の足元には、のんびり草を食む牛がいました。 電波干渉計などの大型パラボラアンテナが林立する光景は圧巻でした。 電波で捕らえた銀河の中心。光学望遠鏡では見えない世界です。
膨大なデータ処理に使われた当時最新鋭の国産VP(ベクトル・プロセッサ)。 当時VLBI観測記録に使われた長さ3Kmの磁気テープ。これにわずか13分の観測データしか記録できなかったとか。 VLBIの研究者に質問する長谷川(うぐいす台)さん(写真中央)。 星が誕生する仕組みを説明する手作りの模型に、温かみを感じました。
この電波望遠鏡建設の中心メンバーである国立天文台の森本雅樹さんの軽妙なトークで、VSOP(お酒の名前ではありません)の説明がありました。 VSOPの説明コーナーには、もちろん呑むVSOPも置いてありました。 森本雅樹さんの著書「宇宙経由野辺山の旅」には電波望遠鏡にかける思いが綴られています。 著書にサインをいただきました。



<解説>

野辺山宇宙電波観測所
 1978年に発足し、総工費100億円、5年の歳月をかけて電波望遠鏡の設備が作られました。
 詳しくは「国立天文台野辺山」のホームページへ。

ミリ波観測
 波長10mm〜1mm、周波数にすると30GHz〜300GHzです。星間分子などの宇宙からの微弱電波を捕らえるためには非常に高い精度の観測技術が必要になります。
 アンテナの向きが変わることによる鏡面のたわみの克服などのハードルがあまりにも高く、当時世界から日本での建設は不可能といわれました。この45m電波望遠鏡は、科学者とエンジニアの「意地と知恵と技術の結晶」です。こんなに大きな「おわん」の表面の凸凹の誤差が0.2ミリ以下・・・いったいどうやって造られたのでしょう。
 その秘密は、上に紹介した森本雅樹著「宇宙経由野辺山の旅」(丸善)のほか海部宣男著「電波望遠鏡をつくる」(大月書店)などに書かれています。

VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線干渉計)
 遠く離れた複数の電波望遠鏡同士が協力して、あたかもひとつの電波望遠鏡であるかのように天体を観測します。最大で地球サイズ口径の電波望遠鏡となり、高い分解能を駆使して天体の微細な構造等を調べることができます。

VSOP(VLBI Space Observatory Programme:スペースVLBI)
 宇宙に電波望遠鏡を打上げ、地上の電波望遠鏡とともに口径3万kmにもおよぶ電波望遠鏡として、より高い分解能で銀河や星を観測します。




   
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