2018年2月17日 梶田隆章教授 講演会（場所：くにびきメッセ 国際会議場）
１．島根大学 服部泰直学長
 梶田先生は東京大学に二人しかいらっしゃらない「卓越教授」のお一人です。
日本国民はノーベル賞とオリンピックに特に関心が高い。今日のフィギュアスケートは？・・・に、会場から「金と銀とった！」の声。皆で拍手でした。
２．島根大学 ヒッグス・初期宇宙プロジェクトセンター長 波場直之教授
・本日は島根大学ヒッグス・初期宇宙プロジェクトセンター7回目の講演会。
・センター開設５年目で、世界一流の研究者との共同研究体制ができている。成果を期待していただきたい。
３．東京大学宇宙線研究所長 梶田隆章教授
講演 「神岡の地下から探る宇宙と素粒子－ニュートリノと重力波－」
自己紹介
・埼玉大学で物理学を学ぶ。高校・大学と弓を引き、大学時代は弓道中心の生活をしていた。
・東大大学院へ進み、小柴昌俊（2002年ノーベル物理学賞受賞）研究室でカミオカンデ実験に携わる。
（１）ニュートリノ
ニュートリノとは
・ニュートリノは電荷も大きさも無く、地球を1万個並べてようやく１回物質と衝突する位で、捕えることが難しい。
・ニュートリノには電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノの３種類がある。
カミオカンデ実験
・カミオカンデ（岐阜県神岡町）は、研究チームが自分達で作って1983年から観測を始めた。当初は陽子崩壊の観測が目的だったが、途中から太陽ニュートリノの観測に切替えることとした。
・改造後のカミオカンデで観測を始めた直後の1987年2月23日、大マゼラン銀河で起きた超新星1987Aからのニュートリノを捉えた。（小柴昌俊教授が2002年ノーベル物理学賞受賞）
ニュートリノ振動の発見
・カミオカンデの観測データから、電子ニュートリノの数はほぼ理論値通りなのに、ミューニュートリノの数が不足していることがわかった。これは、改造した解析プログラムの検証をする過程で発見したことだった。
・カミオカンデの上空から来るニュートリノと地球の裏側から来るニュートリノの数に差があることは、ニュートリノに質量があることを示すニュートリノ振動の証拠の可能性がある。このことを1988年に論文発表したが、世界での評判が悪かった。
スーパーカミオカンデ実験
・さらに観測精度を上げるため、カミオカンデの20倍の規模のスーパーカミオカンデを建設。1996年から2年かけてデータを採り、1998年にニュートリノ振動の証拠を発表した。（梶田隆章教授が2015年ノーベル物理学賞受賞）
・現在、ニュートリノの質量は素粒子クオークの10-10倍と、非常に小さいことがわかっている。これは、現在の宇宙に反物質が無いことと関係しているのではないかと思っている。
（２）重力波
・重力波は百年ほど前、アインシュタインの一般相対性理論で予言されていた。
・2015年、およそ14億光年彼方で起きた二つのブラックホール合体による重力波を、アメリカの観測装置が捉えた。この重力波のエネルギーは、天の川銀河の全エネルギーの300億倍という途方もなく大きなものだった。
・重力波を観測するためには、長さ3～4kmの観測装置では10-16cmほどの変化を捉えるとても難かしい技術が必要となる。
・中性子星の合体や超新星爆発からの重力波も観測できるはず。興味深いことに、これまで謎だった金やプラチナの起源が、中性子星の合体ではないかと考えられている。
・日本でも重力波を観測するため、2010年からカミオカンデの近くにKAGRA（かぐら）というレーザー干渉計を建設中で、2019年末には観測を始める予定。
※講演の「まとめ」は、下記の安部さんのコメントをご覧下さい。
☆
直接お話を聴くと、難しいテーマが本を読むよりとても身近に感じられます。が、やはり難しい内容です。高校生や大学生から沢山質問があって、頼もしく感じました。
先生の著書にサインをいただきました。とても気さくに応じていただいた上に、「３回程読みましたが、私には難しくて・・・」と言うと、「すみません！」と謝られてしまいました。ほんとうにやさしい先生でした。
金津（石橋）
★
素粒子とかニュートリノの理論そのものに理解しようとすると、 その難しさに気が億劫になってしまいます。
ただ今日のお話は氏が観測現場の第一線に携わっておられることから、とてもわかりやすく共感できる内容でした。
「われわれ人類の知の財産を増やすためであり」、
「学問的な興味、そして宇宙の成り立ちに一歩一歩近づいている」、
「日本の装置で重力波を観測し、知らない宇宙を研究したい」、
氏が語る言葉に観測者としての好奇心を感じました。
まとめとして、会場のみなさんにメッセージを送られました。
「みなさんには科学に興味をもってもらい、
科学研究を応援、あるいは科学研究に参加してもらえればと思います。」
「若い皆さんは、
人生のいつ本当に人生を決めるような大切な出会いがあるかわからないので、
広く目と心を開いて、そして大切なものに出会ったときのために準備（勉強）を。」
今日は幅広い年代の参加があり、講演後の質疑では高校生からの質問もありました。
松江星の会からは、金津・佐藤・長谷川・花岡・古都・安部が聴講しました。
安部（八束）
★
ノーベル賞受賞者の講演が聴ける滅多にないチャンスが巡ってきました。
お話の内容はニュートリノと重量波の観測。
梶田隆章教授は実験物理学者として研究されているので内容も実験装置のお話が多くなります。
僕の関心はやっぱり「カミオカンデとスーパーカミオカンデ」。
内部構造の話とか建設中の苦労話も交えて楽しくわかりやすいお話でした。
稼働間近の重力波望遠鏡KAGRAのお話の中では「鏡の熱振動」を押さえるために極低温状態を保たなければならないとか、我々の日常では考えのお及ばない苦労があるそうです。
今日は少し賢くなった気がしました。
古都（米子）
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